【ポイント】
従来技術では困難であった我々の健康・疾病に関わるタンパク質・RNA を数秒で解析す る新しい解析手法の実証。
【背景】
我々の健康や疾病に関連したタンパク質・RNAを高速で分離する技術は、未来医療にお いて極めて重要な科学技術です。しかしながら、現在のタンパク質・RNA 分離技術では、 我々の健康・疾病に関わる様々なタンパク質・RNAを分離するには数十時間程度の時間が 必要です。これは、タンパク質・RNAと同程度の大きさの空隙を持つゲル中を低電場でゆ っくりと泳動しないと分離できないことが原因です。従って、タンパク質・RNAを数秒で 分離する分析技術が強く望まれていました。
世界初、ナノ“サクラ”でタンパク質・RNA を数秒解析
名古屋大学大学院工学研究科(研究科長・新美 智秀)化学・生物工学専攻 馬場 嘉信
(ばばよしのぶ)教授、安井 隆雄(やすいたかお)助教、Sakon Rahong博士研究員の 研究グループは、大阪大学産業科学研究所 川合 知二(かわいともじ)教授、九州大学 先導物質化学研究所 柳田 剛(やなぎだたけし)教授のグループらと、世界で初めて、 ナ ノ “ サ ク ラ ”(Nano SACRa: Nano-wire Structures with Au-nanodots Casting 3D-Ramification)から、数秒でタンパク質・RNAを超高速解析することに成功しました。 現在のタンパク質・RNA解析技術で、我々の健康・疾病に関わる様々な大きさのタン パク質・RNAを解析するには、最短で数十時間程度の時間が必要です。これは、サイズ の小さいタンパク質・RNA を分離するために、タンパク質・RNA と同程度の大きさの 空隙を持つゲル中を長時間かけて分離しなければならないことが要因です。
今回の研究では、直径 10nm 程度のナノワイヤ構造体をサクラのように形成すること で、このナノ”サクラ”が生み出す空隙の大きさが、タンパク質・RNA と同程度であるこ とを見出しました。このナノ”サクラ”の空隙を利用することによって、従来の分離技術で は不可能であったタンパク質・RNAを数秒で解析することに成功しました。
今回の研究成果は、2015年6月15日発行の英国の科学誌『Scientific reports』誌(電 子版)に掲載されました。
【研究の内容】
今回の研究では、直径10nm程度のナノスケールの棒(ワイヤ)をサクラの樹のよう に構築し、そのナノ”サクラ”が形成する空隙がタンパク質・RNA と同程度の大きさを 持つことを発見しました。このナノ”サクラ”を利用することによって、タンパク質・RNA をわずか数秒で分離(従来技術:数十時間)することに成功しました。
【成果の意義】
本技術を展開することによって、健康・疾病等に関連するタンパク質・RNAを超高 速で解析することが可能となり、我々の安心・安全を見守る科学技術へと発展すること が期待されます。
【用語説明】
ナノワイヤ:数ナノメートルの大きさから構成される一次元の棒状ナノ構造体。
ナノ”サクラ”:ナノワイヤをサクラの樹のように形成した構造体。Nano SACRa (Nano-wire Structures with Au-nanodots Casting 3D-Ramification)のこと。
【論文名】
Three-dimensional Nanowire Structures for Ultra-Fast Separation of DNA, Protein and RNA Molecules
Sakon Rahong, Takao Yasui, Takeshi Yanagida, Kazuki Nagashima, Masaki Kanai, Gang Meng, Yong He, Fuwei Zhuge, Noritada Kaji, Tomoji Kawai and Yoshinobu Baba
Scientific Reports, 2015, 5, in press (Nature Publishing Group)